以前、1.02に「先発・救援の難易度を再検討したうえでWARを再計算する」という記事を寄稿しました(https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53639)。
内容としては先発・救援の難易度の差をtRAで求め、それをWARに当てはめて再計算というものでした。
しかしこの記事で課題となるのが基準となる先発のリプレイスメント・レベルであり、それは元々の計算式ではリーグの平均失点率×1.39としていましたが、救援投手側を変えるのであればこちら側も変えないと整合性が取れません。このあたりは結構曖昧なままで寄稿してしまっていました。
件についてぼんやりと「先発と救援の成績を加重で変形させて合算すれば求められるかな」と考えながらその旨をツイートしたところ、sami氏からこのようなリプライを頂きました。
はじめまして。記事の方を大変興味深く読ませていただきました。個人的に思った算出方法は、「控え投手全体のリプレイスメントレベル(先発と救援のリプレイスメントレベルのイニング加重平均)が従来と同一」かつ「先発と救援の失点率差が0.92点」として連立方程式を解くか、— sami (@RCAA_PRblog) July 20, 2020
1.34倍と0.92点を使って「控え救援投手が先発起用された際に記録しうる失点率」を計算して、この数値と「控え先発投手が先発起用された際に記録しうる失点率」(1.39倍)を使ってイニング加重平均を計算して、「控え投手全体が先発起用された際に記録しうる失点率」を計算する、等があるかと思いました。— sami (@RCAA_PRblog) July 20, 2020
方法論としては結構イメージに近いです。1つ目はかなり力技な感じがするので2つ目で計算してみましょう。
まず、過去の研究からリーグ失点率×1.39が控え先発投手の先発時の成績になることがわかっています。一方で今回の分析での計算結果を用いると、リーグ失点率×1.34+0.92を控え救援投手が先発したときの成績と仮定できます。
2014年~2019年の先発・救援投手の控えを各球団の投球イニング数上位80%を除いた選手であるとすると、それぞれの投球イニング比は先発が約62%、救援は約38%です(これは全体の投球イニング数の比と大体同じです)。
後は「控え投手全体が先発起用された際に記録するであろう失点率」を求めるために
- (リーグ失点率×1.39)×0.62+(リーグ失点率×1.34+0.92)×0.38
- リーグ失点率×1.37+0.35
例えば、2019年のNPBの平均失点率はセ4.27・パ4.31でしたが、上の式に当てはめた場合リプレイスメント・レベルはセ6.20、パ6.26となり、既存のものよりやや高い(=レベルが低い)数字になりました。更に、ここからコラム内で求めた0.92を引くと救援のリプレイスメント・レベルと考えることができます。
Delta1.02で現在WAR算出に利用されているものと今回求めたものとを比較すると以下のようになります。
このリプレイスメント・レベルを使い、2019年のチームごとのWARを再度計算しなおしました。
なお、トム・タンゴはWARの分配を野手57%、投手43%としており、fangraphsでリーグのWARを比べてもそのとおりになっています。一方で、1.02でのWARの合計はずっと投手>野手です。この違いは恐らくリプレイスメント・レベルや起用の差から来ていて、合計値ありきでリプレイスメント・レベルが決定されているわけではありません。
WARの合計が以前と同等であれば適正なリプレイスメント・レベルであるとは限らないということには留意すべきです。
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