IsoDを使わない理由

2020年9月17日木曜日

セイバーメトリクス

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IsoDについて

 IsoD(Isolated Discipline)とは出塁率から打率を引いた指標で、専らその打者がどれだけ四死球を選べるかを比べるのに使われますが、これはwhipなどと同様に、現代のセイバーメトリクス識者には既に使われなくなった指標です。

IsoD = 出塁率 - 打率

そのため、類似するIsoP(Isolated Power)はあえてIsoDと区別する必要もなく、そちらはPを付けずISOと表記されることが多いです。
 ……と思っていましたが、Twitterで「IsoD」で検索をかけてもかなりの数が引っかかることからわかるように、現在でもそれなりに使われることがあるようです。

Googleトレンドより、過去10年間のIsoDの検索数

 わかっている人には初歩的すぎるためか、これをダメ出しする記事を日本語ではあまり見かけない印象を受けますので、今回はあえてこれを取り上げます。

IsoDの問題点

 打率を計算するとき、計算式の分母が打数であるというのは野球ファンなら誰しもが知っているかと思います。一方で出塁率の分母はこれに四死球と犠飛が加わります。打率と出塁率の計算式の分母は別物なのです。

 これによって、まずIsoDが何に対する割合にもなっていないという問題が生まれます。出塁率から打率を引いたはいいのですが、それで終わってるんですね。例えばある選手のIsoDが.100だったとして、それ以上の応用や発展性がない。この辺OPSと同じです。
 恐らくは安打以外の出塁要素を抽出したかったのでしょうが、それならば打率側も分母を揃えて引き算する必要があります。
こうであってほしい

現実はこちら

 そしてもう一つ、こちらは致命的なのですが、分母が違うために選手ごとに条件が違い、打率が高い選手ほど不利になってしまう問題があります。
 例えば600打席立って四球数は60個だった二人の選手がいたとして、片方は打率.250を残し、もう片方は打率.350だったと仮定します(死球や犠飛、犠打など他の結果は0とします)。
両者のIsoDはどうなるでしょうか?
選手打席四球安打打率出塁率IsoD
A60060135.250.325.075
B60060189.350.415.065

同じ打席数・同じ四球数であるにも拘らず、Aの方がIsoDが大きくなっているのがわかります。
これでもピンとこないという人は、スケールを1試合の結果まで縮めてみてください。4打席無安打2四球だった選手と4打席2安打2四球だった選手のIsoDはどうなるでしょう?
選手打席四球安打打率出塁率IsoD
C420.000.500.500
D4221.0001.000.000

前者は出塁率5割に対して打率0割でIsoDは.500、後者は打率・出塁率共に10割でIsoDは0となりました。
安打を打てば打つほど不利になっていく数字であるため、純粋に四球を選ぶ能力を測るのには適していないということがわかります。

代わりに使うべき指標 

基本的にBB%(四球/打席)を使えばいいと思います。リーグ平均は大体8~9%といったところ。上で挙げた2つの欠点はカバーされています。

BB%でA選手とB選手を評価すると以下の通り。

選手打席四球安打打率出塁率IsoDBB%
A60060135.250.325.07510.0%
B60060189.350.415.06510.0%

当然ながら両者ともに同じ数字になりました。

上では触れませんでしたが、IsoDには四球と死球を区別していない欠点もあります。
四球を獲得する能力とはまた別に死球を獲得する能力も存在しますので(阪神福留のように四球が多くても死球の少ない選手もいればその逆もいます)そのあたりも含め、あえてIsoDを使う意義は薄いと言えるでしょう。



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