先日「うちの打線は初物に弱い」は本当か?というコラムを公開しましたが、執筆中やそこまでの経緯を少し語ります。ちなみに、前回と同様に今回のものも執筆自体は7月くらいにはほぼ終わっていたりします。
記事を書こうと思ったきっかけ
元々は昔からネット上で散見される「○○打線は初物投手に弱い」という言葉がきっかけでした。こうした言葉は、試合前ではやたらよく見かける割に、いざ試合中に打ち込むと忘れ去られ、逆に抑えられると「やっぱり初物には弱い」と評されます。
確証バイアスだか後知恵バイアスだか、野球ではこういうのが多いですよね。先発を引っ張る采配に「ここで続投はありえない」と言い、そこから三者凡退すればそんな発言は忘れてしまい、逆に打たれると「やっぱり降ろすべきだった」と主張する。
野球ファンなんてそんなものだと言ってしまえばそれまでですが、それは実際に数字としてどれくらい影響があるのか調べる、即ち定量的に測るというのは、セイバーメトリクスにおける基礎的な思考です。
また、個人的な印象として、投手の年齢曲線は俄には信じ難かったというのもありました。
もちろん、MLBも同様の傾向にあることは知っていましたし、過去に何度か自分でも調べてはみたのですが。いくら投手の肩肘が消耗品とはいえ、20代前半から劣化が始まるのは流石に極端ではないかと。
過去に二軍の投手の年齢曲線を調べたこともあって(同じことを最近note記事にされた方がいらっしゃるのでリンクを掲載しておきます)、そちらの衰えは20代後半に始まります。これは野手のグラフに近い形で、一軍投手のものと大きな隔たりがあります。
試合数が少なく投手の消耗が少ないというのが第一に考えられるのですが、それ以外にも、優秀な選手は一軍に昇格すること・勝利のみを追求する場ではないことから選手の出場機会が分散するため、慣れられにくいというのが大きなファクターとしてあるのではないかと考えました。
それとは別に、投手の成績曲線というのは、今は昔ペナスピというシミュレーションゲームを作っていたときも頭を悩ませていた問題でもあります。上の年齢曲線を再現しようとすると、どうしても大卒くらいの新人でリーグを代表するレベルのスーパーエースを登場させる必要が生まれてしまいます。それもかなりの頻度で。そのあたりちょっとリアリティが無いと感じつつも、解決策を見いだせないでいました。
もしも、対戦回数を重ねるごとに球筋に慣れられてしまい成績が落ちていくのであれば、この極端なグラフにも納得がいきます。
これらから、自分の中ではある程度こうなるであろうという確信めいたものがある中での検証でした。とはいえ、ここまではっきりとした傾向が出るというのは出来すぎではないかと我ながら勘ぐってしまいましたが。
分析の過程
基本的にはコラムの中で辿ったとおりの過程を経て、過去10年分のデータから検証を行いました。が、いくらか省いた部分もあります。
条件となる対戦回数
利き腕と身長別の初物成績
移籍選手の成績と翌年成績の比較
記事を書こうと思ったきっかけのところにもある通り、投手は早い時期にピークが来る要因の一つはこれではないかと思ってのものでした。そのためメインの分析はそこで終わりで、後は参考データのような位置づけになっています。
初物に強いチーム・選手のデータ
というわけで、参考程度のものとして調べました。
初物に弱いというと聞こえは悪いですが、逆に言えば2度目ではきちんと攻略できているということですので、上位なら優秀だとか下位なら駄目だとかそういう話ではないです。
打席の内容を切り分けて考えても、上位は2回目に比べて初見時のSO%が低かったりBB%が高かったりしたという当たり前の結果にしかならず、「このチームが初物に強かったんだな」と判断する以上のものにはなりませんでした。
コラム内で該当年の球団別「差分」(初見得点率-2度目の得点率)と翌年の「差分」との相関関係は0.362と記述しましたが、他の打撃スタッツとの相関係数も掲載しておきます。
初見差分と各スタッツの相関
「元々三振が多いチームは初物相手に大振りしてけちょんけちょんにされやすい」「足のあるチームほど引っ掻き回して精神的なゆさぶりをかけやすい」など特定の傾向は見られませんでした。
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